ウェブマガジン カムイミンタラ

1990年07月号/第39号  [ずいそう]    

草木で染める色のいろいろ
宮原 ミユキ (みやはらみゆき ・ 織すたじお「えむ」主宰)

手織りの仕事をしているので、糸を草や木、花、葉などで染めたりしています。住んでいる所が、過日、ヘリコプターの事件で有名になった、あの「藻岩山」のふもとですから、家の周りを少しウロウロすれば、ふきのとう、よもぎ、タンポポ、笹、いたどり、菊イモなどが大量に手に入るので、うれしい限りです。空き地がなくならないように、いつも祈っています。

採集した植物を、大なべでぐつぐつ煮出した液で染めるのですが、発色させる薬品によっていろいろ違った色に染まるということが、この草木染のひとつの楽しさでしょう。植物に含まれる染料を、繊維に化学的に吸着させるこの薬品は「媒染剤(ばいせんざい)」とよばれ、金属性の薬品では、アルミ、錫(すず)、銅、クロム、鉄など、また、アルカリ性、酸性の薬品もあります。主に黄色系の、明るい色に発色させたいときにはアルミ媒染か錫媒染で、暗い色にしたいときは鉄媒染にします。クロムでは赤茶系になることが多いようで、銅では茶系になったり、緑系に発色したりします。

私が好んでよく用いるのは、笹の葉の銅媒染で出る明るい、やわらかな若草色や、マリーゴールドの花の、アルミ媒染の黄色と、銅媒染の金茶色とか、そして何といっても玉ネギの外皮による錫媒染の強烈な玉子色と、鉄媒染のこげ茶色の元気の良さには、いつもひきつけられてしまいます。

1年以上前になりますが、ふとしたことで、営林署のお仕事をしておいでの方から耳よりな話を伺いました。「アオダモ」(またはヤチダモ)という木の切り口が雪に接しているとき、周りの雪が藍色に染まっている、というのです。私の気持ちはおどってしまいました。“「藍染」でなく「草木染」で青色を染めたい、何とか北海道にそんな植物をみつけたい”と、ずーっと思っているからです。営林署の木は国の財産ですから頂けませんが、幸運にも野球のバットを作っている工場の廃材を分けて頂くことができました。

お届け頂いた段ボールにいっぱいの、その「アオダモ」は全体として茶色っぽくなっていますが、なかには緑味を帯びた部分があります。その木片をナイフで細かく削ります。「今は茶色に見えても、染まったら、きっと青い色に、もし悪くても緑系にはなるのでは」と自分をはげましつつ、いろいろな手段で染めてみましたが、しかし、結局その実験ではついにすべてが茶色系になり、青く発色することはなかったのです。私にとって、“まぼろしのアオダモいろ”でした。

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