ウェブマガジン カムイミンタラ

1989年11月号/第35号  [ずいそう]    

国際文化交流とまちづくり
伊藤 裕満 (いとう ひろみつ ・ アイヌ民族博物館学芸員)

本年9月にわが白老町で「北方民族国際フェスティバル」が開催された。このフェステにソ連邦サハリンのニブヒ、フィンランドのサーミ、カナダ北西海岸のインディアン、同じくカナダ東部のイヌイットの各北方少数民族27名が参加した。これに道内の樺太アイヌ文化保存会と地元白老のアイヌ(民族芸能保存会員)合わせて30名ほどが加わった。ここで、町民あげての歓迎会、町民と各民族とのふれあい会、小・中学校の児童・生徒との交流会、民族芸能祭、講演会・シンポジウムなど、多彩な行事が三日間にわたって、開催された。

これらの内容からわかるように、この事業は町民全体の利益に資し、白老町のあたらしい「まちづくり」を推進していこうとして行ったところに最大の特徴がある。すなわちその目的は、第1に、北方民族が一堂に会しその渦中に町民を参加させることによって、アイヌ文化をはじめとする北方諸民族のすぐれた文化をまず肌で理解してもらうこと。第2には、外国人ないし北方民族の人々に対する平和的で友好的な「友人意識」を町民に育ませ、国際的センスにあふれた「ひとづくり」「まちづくり」を進めていくことである。

人間はみな尊い人格を持つ。その人格を互いに理解し合っていかなければ、円滑な人間関係・社会関係は築けない。民族でも国家でも、人間と同じようにそれぞれ個性を持っている。その個性こそが民族や国家の歴史であり、文化だといえまいか。だからこそ、われわれはそうした個性を尊重し理解することにつとめ、互いに対等な立場に立って国際社会の一員になっていかなければならないのである。

“国際色豊かで、文化の香り高いあたらしい「まちづくり」”。はじめておこなった北方民族国際フェスティバルは予想以上の好評を得た。終えてみて、このフェステは継続していくことの重要さと努力を続けていくことの必要性を改めて教えてくれた。と同時に、町内の若者が手を携えて1つの目的に向かうことの「たのしさ」もまた教えてくれたのである。

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