ウェブマガジン カムイミンタラ

1987年05月号/第20号  [ずいそう]    

ファミリー料金
山中 燁子 (やまなかあきこ ・ 北海学園大学助教授)

藻岩山の早春の風景を眺めていると、半年前のニュージーランドの早春を思い起こす。ニュージーランドは火山国で、人口325万人、羊が6800万頭という、羊と観光の国である。

昨年9月にクライストチャーチで行なわれた国際会議の帰途、有名な観光地のロトルアに1泊した。家族連れがずいぶん多いのは、南半球の9月が冬休みだからなのだろうと思っていた。

ロトルアは温泉町で、マオリ風の浴場も人気があり、また湖全体が煮えたっているボイリングレイクや、間欠泉、マオリセンターなど見るべきところがたくさんある。レインボーパークはニュージーランドの代表的な植物が植林され、人工的に鳥や魚が生棲しやすい環境をつくって、キウィなども飼っている。いわば動植物公園である。

その横に、市内を展望できる山頂までのロープウエイがある。料金をみると、大人5ドル、小人3ドル、その下にファミリー10ドルとなっている。ニュージーランド・ドルは1ドル90円だったので、ファミリー900円ということになる。

私は、「ファミリーというのは何人までですか」と尋ねてみた。すると係りの人は、

「もちろん、3人でも10人でも、ファミリーならいいのですよ」と。

それから気をつけてみると、なんと1日のバスツアーにも半日ツアーにもファミリー料金がある。しかも、ホテルの料金システムもおもしろい。物価の安い国なのに、1泊1万4千円とはずいぶんホテル代が高いと、私は思った。それで後学のためにと「ダブルの部屋はおいくらですか」とフロントで聞いてみると、

「どの部屋も1室1万4千円です。この国では、ひとり旅はいちばん高くつくのですよ。この次は家族を連れていらっしゃい」なるほど、家族連れの旅行者が多いわけである。

温泉で、6畳に1人泊っても、家族3人でも「1人いくら」という料金設定の日本と比べて考え合わせると、「1室いくら」や「ファミリー料金」を導入することで北海道民の家族旅行も掘り起こせる。また海外や本州からも安い料金で家族や親しい仲間と旅行ができるとなると、家族のコミュニケーションの場としての旅行も考えられるし、観光客の数も増える。

北海道にとっては一石二鳥となるのでは…と、日本から移植され、品種改良を重ねたという美しいピンクのカメリア(椿)の大木を眺めながら、つくづく思ったことであった。

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